ペンを持って、紙に向かう。
話している人の言葉を拾いながら、アイコンを描いて、矢印でつないで、色をのせる。
グラフィックレコーディングを始めたばかりの頃、私はずっと「うまく描けているだろうか」ばかりを気にしていた。
でも、本当に大事なことは、そこじゃなかった。
何のために描くのか?問いとともに一緒に寄り添ってくれる素敵な本が出版されたので紹介したい!

コロナ禍でグラレコと出会った
2021年。コロナ禍のオンライン画面越しに、グラフィックレコーディングと出会った。
宮崎にいると、グラレコが使われている現場をリアルで見る機会がほぼない。画面の中で誰かが描いているのを見て、「これは一体何なんだろう」と思った。きれいだな、すごいな。わたしもやってみたい!と思って始めたグラレコ。
でも書けば描くほど、これであっているのかな?私が描いているのって伝わっているのかな?
どこかに正解があって、その通りにしなくてはいけないのではないか?
そんな疑問や不安を抱えながら、独学でアイコンを練習して、色の使い方を調べて、少しずつ現場に出るようになった。民間、行政、大学——描いたグラレコは気づけば100枚を超える。
でも、描けば描くほど、最初の疑問が深くなっていった。
グラレコって、きれいに描くことが目的じゃない。じゃあ、何のために描くんだろう。
著者の玉有先生とのご縁
著者である玉有朋子先生と出会ったのは、先生が宮崎大学の学会にいらっしゃったときだった。ご縁があって、一緒にワークショップに入らせていただいた。その後、私がアート・オブ・ホスティングという対話の実践に飛び込むきっかけをつくってくださったのも、玉有先生だった。
だから、SNSで「本を出す」と知ったとき、すぐに予約した。
届いてから、何度も何度も読み返した。
それくらい素敵な本なのでグラレコに興味を持った方にぜひ読んでいただきたい!
「話し合いの道具」という視点

『話し合いの土台をつくる グラフィック・レコーディング』
手に取るたびに、新しい気づきがある。
グラレコは、話し合いの道具だ。
Part 1「可視化はなぜするの?」を読んで、ずっと!言語化できていなかったものが、ようやく形になった気がした。誰のために描くか。何のために描くか。何を描くか。その問いを持ちながら描くと、同じ一枚がまったく違う機能を持つ。
小さいまとまりをつくる、関係性を見つける、場に機能させる——そういった考え方が、押しつけがましくなく、丁寧な言葉で書かれている。
技術を学ぶ前に、まずここを読んでほしいと思った。
私が知りたかったことが、全部あった
グラレコを始めた頃の自分が知りたかったことを思い返すと、段階があった。
まず「グラレコって何?」という概念の理解。次に「アイコンどう描くの?色はどう使うの?」という技術の疑問。そして「もっと見やすくしたい、もっと場に機能させたい」という実践の壁。
この本には、ぎゅ〜〜っとそのすべてが入っている。
アイコンの基礎から立体的な表現まで、感情を表す色使い、テキストの構造化、レイアウトの考え方、似顔絵のプロセス——グラレコの裏側がこれだけ丁寧に言語化されている本は、なかなかない。
しかも、なぜ人の目はそこに向くのかという理論的な説明がある。
感覚でやっていたことが言語化される、感覚。読みながら何度も「そうそう、これが知りたかった」と思った。
途中に配色や練習パートがドリルのように挟まれていて、誰かと一緒にやってみたくなる構成も素敵!
色が、感情を動かす
読んでいて特に面白かったのが、感情を表す色使いの章だった。
最近、自分のグラレコをAIに読み込ませると、色と感情がリンクして解析されることがある。色が人に与える影響の深さを、改めて実感している。
ざっと描いても、色で伝わるものがある。逆に、色の選択ひとつで場の空気が変わる。
もっと手持ちの色を使いこなしたいなあ、と素直に思った。
一冊を通して、問いが貫かれている
どのパートを読んでも、根底に流れているものは同じだ。
誰のために、何のために、何を描くか。
似顔絵も、立体表現も、レイアウトの選び方も——すべてがこの問いに答えるための技術として書かれている。最初のページで語られた問いが、最後まで一本の線で貫かれている。
それが、この本をただのハウツー本にしていない理由だと思う。
目の前の紙とペンが、少し違って見える
読み終えたとき、手元にある紙とペンが少し違って見えると思う。
グラレコは特別な資格はいらない。
でも「誰のために描くか」を意識するだけで、一枚の使い勝手がまったく変わる。
ぜひこの問いとともに、本を手に取っていただけたら嬉しいです!
私も実践を続けていこうと思います。

『話し合いの土台をつくる グラフィック・レコーディング』 玉有朋子 著|クリエイツかもがわ|2026年4月

